マーケティング効果の最大化:ソーシャルメディアのパワーを活かす

マーケティング効果の最大化:ソーシャルメディアのパワーを活かす

ソーシャルメディア* がマーケティングに使われるようになる前、企業は、新聞、ラジオ、テレビなどのメディアに頼っていました。企業は、広範な人々にリーチするには多額の資金を費やす必要があり、なおかつ、消費者の行動を追跡し、反応を示し、反響を増幅させ、誘導するためにプラットフォームを利用することもできませんでした。ソーシャルメディアの登場は、マーケティング成果を最大化するために多様な購買目的を結びつけることに重点を置く、新しい戦略を生み出しました。今や、ほとんどすべてのビジネスにおいて、デジタル・ブランド・マーケティングとパフォーマンス・マーケティングの出現が見られています。
しかし、ソーシャルメディア上のブランド構築は、「認知度」や「アドボカシー(=熱心なファン)」といった指標に悩まされています。ソーシャルリスニングのサービスを利用しない限り、売上への明確かつ直結した関連性は示せず、中小企業のビジネスはマーケティングファネルの上部の効果を見出すことが難しくなります。このため、特に短期的なビジネス貢献として、ソーシャルリスニングの価値は過小評価されがちです。パフォーマンス・マーケティングは、販売数や収益と関連しているため、追跡が容易であり、人々はその指標に注目しやすいです。このことが徐々に、私たちがよく言う「成長の罠」のような、企業にとって目に見えない罠を作り出していくことになるのです。
 
*ソーシャルメディアとは、インターネットを利用して誰でも手軽に情報を発信し、相互のやりとりができる双方向のメディアのことを指します。よく聞くSNS(Facebook、Instagram、TikTok等)は、ソーシャルメディアの種類に当たり、ブログや動画共有サイト等もソーシャルメディアに含まれます。

ベトナムのソーシャルメディア利用状況

Source: Digital 2023 Vietnam
Source: Digital 2023 Vietnam
2022年のデジタルレポートによると、ベトナムのソーシャルメディアユーザーは7,000万人で、全人口の71%を占め、うち89%が18歳以上でした。これは極めて重要な数字であり、ベトナムでECやデジタルマーケティングでビジネスを展開する企業にとって、いかに潜在的な可能性を秘めているかを示しています。
なぜベトナムに可能性があるのかを理解するために、データを掘り下げてみましょう。ソーシャルメディアの1日の平均利用時間は2時間28分で、35.7%の人が買いたい商品を探すために時間を使う傾向があり、53.8%の人が好きなブランドについて調べたり、ブランドに関わったりするのが好きだという結果が出ています。このような人々のルーティーンに後押しされ、ベトナムのデジタル経済は2022年に230億ドルに達し、2025年には500億ドルに達する勢いです。また、今後成長を維持し加速させるためには、中上流顧客向けのサービスを構築する必要があると考えられます。

デジタルマーケティングファネルとは?

20世紀末、エリアス・セント・エルモ・ルイス氏は、顧客と企業との関係の段階を強調したモデルを作成しました。「AIDAモデル」は、すべての購買には次のような段階があることを示しています。
  • 認知(Awareness): 見込み客が、自分たちの問題と解決策を認識している。
  • 関心(Interest): 見込み客が、サービスや商品に興味を示している。
  • 欲求(Desire): 見込み客が、ブランドを評価し始める。
  • 行動(Action): 見込み客が、購入するかどうかを決める。
GoogleやFacebookが誕生したとき、デジタル化に応じた目標が定められ、それぞれの項目で指標を定め、KPIとして各目標に反映されました。
  • 認知(Awareness) (ブランド評価指標/Brand Metrics): リーチ、認知度
  • 関心(Interest) (検討/Consideration): 動画再生回数、投稿のエンゲージメント
  • 欲求(Desire):リターゲティング(クリック数、ランディングページ閲覧数)
  • パフォーマンス(Performance): コンバージョン(売上、カートへ追加など)
「パフォーマンス」の目標を優先することは、すぐに目に見える結果が得られるため、魅力的に見えるかもしれません。これは、中小企業や中堅企業が利益を最大化するために注力したいことでもあります。大きなブランドと競争し、マネー戦争に突入するための大きな予算はないでしょう。しかし、何であれ、ブランドは消費者のファネルを広げ、信頼を高めるために、「認知」と「検討」の段階にも投資すべきです。これは最終的に、パフォーマンスの目標に直面したとき、コンバージョンする傾向の高い消費者数を増やすことに繋がります。そして、短期的な目標と長期的な目標の間に繋がりを持たせることで、持続可能性を生み出すことができるのです。
“ブランドにとって、「パフォーマンス」に対する目標を優先することは、結果がすぐに出て満足できるように見えるので、誘惑的かもしれません。しかし、「ブランド」や「検討」における目標は、より多くの人々をパイプラインに呼び込み、通過させることで、消費者ファネルを "広げ"ます。その結果、最終的には、「パフォーマンス」目標にたどり着くまでに、コンバージョン傾向の高い消費者をより多く獲得することができるのです” Fabio Giraldo, Group Director, Advanced Analytics Lead, Mindshare

デジタル施策により利益増加を目指す

2019年初頭に設立されたCoolmateは、サブスクリプション・ボックスで事業を開始しました。同社の公式サイトの発表によると、
  • 1年間で100万件近い注文の出荷に成功。1日あたり2,700件の注文数に相当。
  • 2022年に販売された商品は300万点以上。1日あたり8,200点に相当。
この驚くべき数字から、Coolmateはアジア太平洋地域の新興大手企業トップ10にランクインしています(KPMGおよびHSBCの2022年版レポートより)。Coolmateは、「Brand/ブランド」「Consideration/検討」「Performance/パフォーマンス」という3つの目標を軸にビジネスを構築した、非常に模範的なケースです。
マーケティングファネルの真ん中の段階では、Coolmateは家庭用品からスポーツウェアまで何でも1クリックで買えるように、製品の品質とデザインの多様性を伝えています。Coolmateはまた、各デジタルチャネルが異なるセグメントに焦点を当てるべきであると気づきました。例えば、FacebookやGoogleの場合、主な顧客は25~34歳の会社員男性で、価格帯はTikTokより高価になり、顧客は若年層が対象です。そしてCoolmateは、ソーシャルメディア上で顧客と関わるための明確な計画を作成することで、顧客の不安をうまく解消しています。Coolmateは、製品がどのように作られているのか、品質にどのようにこだわっているか、サービスを体験した顧客がどのように好印象を抱くか、顧客に明確なイメージを提供しました。それは、ストーリー、サービス、従業員をはじめとするブランドの全体像を見せているとも言えます。
ファネルの終わりには、ファネルの上部と中部にいる顧客を再びターゲットにするため、Coolmateは大規模なECキャンペーンを打ち出し、プロモーションを継続的に提供します。一度ブランドを気に入った顧客は、このようなプロモーションが利用可能になると決断が早いのです。
実際に、Coolmateは、エンターテインメントとショッピングのような異なるニーズを組み合わせた、数ある新しいデジタル・カスタマージャーニーの例のひとつに過ぎません。ただ、注目すべきは売上増の観点で、「Brand/ブランド」と「Consideration/検討」に対する施策のシナジーで、22%増加という最も大きな効果が出ています。次いで、「Brand/ブランド」と「Performance/パフォーマンス」の施策のシナジーが18%増加し、「Consideration/検討」と「Performance/パフォーマンス」のシナジーが11%増加しました。
Source: Performance marketers are leaning into the brand-building guide
Source: Performance marketers are leaning into the brand-building guide
この調査は、広告主が包括的な戦略をとらなくても、ソーシャルメディアの効率とパフォーマンス・マーケティングを組み合わせることで売上を伸ばすことができることを示しています。

ソーシャルメディアとEC

ECでは、デジタルパフォーマンスを目的とした広告が、ブランド認知・検討目的の広告との間で最も強い相乗効果を発揮します。ですが、ビジネスではよくROAS(広告費用対効果)やCiR(費用対利益率)といった短期的なKPIを主とするため、ブランド認知を目的とするのは適していないのではないかと不安にさせます。
Forbesのレポートにあるように、ブランド名を含む検索は全検索の10%を占めるに過ぎないにもかかわらず、ブランド名を含む検索ワードのコンバージョン率はブランド名を含まない場合よりも100%高いです。では、ブランドキーワードはどこから来るのか、そして、パフォーマンスを最大化し、コストを最小化するために、どのようにキーワードを拡大させていけばよいのでしょうか?答えは簡単で、 口コミとソーシャルメディアです。
ソーシャルメディアとブランド認知の構築は、パフォーマンスだけでなく、運用コストにおいても企業に多くのメリットをもたらしています。
Shopee/Lazada/Tiki/TikTok/AmazonはECの顧客データを販売者と共有していないため、顧客が日々変化する中で、自社の顧客が誰なのか、どのようにサービスを提供するのがベストなのかを正確に把握するのは容易ではありません。もしかしたら、今日は私たちから買ってくれるかもしれないが、明日はより良い品質やサービスを提供する競合他社を選ぶかもしれないのです。ソーシャルメディアは、このようなリスクを軽減するのに役立ち、真の顧客の声を簡単に聞くことができます。さらに驚くべきことに、ソーシャルメディアから優れたソーシャル・グループを作ることで、新製品をテストするための大きな予算を削減することもできるのです。

ソーシャルメディアを活かす3つのポイント

最後に、ソーシャルメディアを活用したデジタルマーケティングビジネスの改善に役立つ3つのポイントを紹介します。
  1. 「ブランド」における指標は、「パフォーマンス」における指標の効果改善に強い影響を与える傾向があり、「パフォーマンス」に焦点を当てた単一の施策を実行するよりも、各施策を通じて見込み客を促進することの価値を示しています。
  1. ブランドエクイティ(=ブランドが持つ資産価値)をパフォーマンス・マーケティング担当者のKPIにしましょう。現状、多くの企業で、パフォーマンスマーケティングのブランドエクイティへの影響を考慮せず、コンバージョンだけに焦点を当てています。企業は、パフォーマンスチームや広告代理店に対して、定期的かつ頻繁にブランドエクイティのKPIを見直し、設定させる必要があります。ブランド指標を重視してコンバージョン率が低下するリスクは低いです。しかし、パフォーマンス・マーケティングがKPIを達成するためには、きちんと策略を駆使し、将来のブランドへの影響に見通しを立てる必要があります。
  1. ブランドのポジショニングとパフォーマンス指標を作成し、結びつけましょう。ブランド独自のポイントを明確にすることは非常に重要であり、市場でのブランド力を決定するブランド構築の基礎となります。Coolmateのような最も成功しているブランドは、自社が提供する特徴的なベネフィットを、誰に、なぜそのベネフィットが重要なのかを、自ずと即座に伝えています。ブランドをポジショニングするとき、考慮すべきことは4点です。Purpose/目的、Emotional Attributes/感情的な特性、 Functional Benefits/機能的な利点、Customer Experience/顧客の体験